ザイアンス効果(単純接触効果)とは、繰り返しおなじものに接すると好意度や印象が高まるという効果のこと。1968年アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが論文にまとめたことで知られるようになり、ザイアンスの単純接触効果、ザイアンスの法則とも呼ばれています。
例としてたとえば、無意識のうちに何度も聞いている音楽は、いつの間にか好きになっていくことが多いですよね。FMラジオが放送するヘビーローテーションだったり、アニメの主題歌などもそうです。これは音楽に対してだけでなく、図形・衣服・味やにおいなどいろいろな感覚、五感に対して起こることが知られています。商品やキャラクター・ロゴマークなどでも同様です。おなじように広告効果も単純接触効果によるところが大きいと言われていて、TVCMでの露出が多いほど良い商品だと思ったり、そのもの自体を欲しくなったりします。
いずれにしても、目でみたり耳で聞いたりするなどの単純な接触回数が多くなるほど、それに対して好感を持つようになることは確かなようです。毎日顔を合わす人を好きになりやすく、遠距離恋愛になると心が離れてしまう人が多いのもうなづけることでしょう。
何度もおなじことを繰り返したり、おなじシチュエーションに遭遇すると人の脳は「これだけ回数を重ねるということはきっと生存に有利なことだ」と認識して、記憶を強化していきます。繰り返し遭遇することが生命の危機に関することだと嫌悪感につながり、無意識でいられることだと好感触につながっていきます。こういったザイアンス効果以外にも、記憶に残ったり好感触を得るテクニックはあって「吊り橋効果」などは恋愛の必殺技として古くから山男に言い伝えられてきましたし、「驚きの眉効果」は単純な繰り返しにあきあきした受験生に「暗記ワザ」と人気があります。
無意識下に働きかける「ザイオンス効果」は、絵画やデザインの世界でも利用されています。誰もが知っている「黄金分割/黄金律」は、普段、私たちがなにげなく目にしている風景のなかに隠された自然のリズム
ですし、木漏れ陽/コモレビは植物の葉が太陽の光を透過するグラデーションです。また建築などでも利用される繰り返し/反復といったリズム、日常生活のなかでも多く目にする対称性などもデザインに応用されます。
ときどきネット上でみかける、営業コンサルのいうザイオンス効果の利用「会う回数が多いほど営業しやすくなる」はまるっきりのウソです。頭でっかちのコンサルや根性論の好きなオヤジ上司がいうことであって(実際に営業の統計をとれば明らかに数字になって現れてきますが…)営業には初対面の印象がほとんどを左右します。ちょっと考えてみれば、あたりまえのことですよね。自分自身のことで想像してもそのウソがわかります。たとえばあなたが決定権のある地位にいて、断っているのに何度も何度も営業マンの訪問を受けるとして、回数を重ねるごとに相手を好きになっていくでしょうか? まるで逆効果ですよね。
ただし、しかしこれが年配のご老人になると話は別です。人恋しさやボケがはじまると理性的な判断が甘くなり、脳の働きのままにザイオンス効果が高まります。高齢者世帯への押しかけ営業がなくならないのは、やはりこういったザイアンス効果が働いているのです。