酷なことをいうかもしれませんが、ニートからの脱出をはかろうと考える人や、現在高校生で将来の進路として美術系専門学校へすすむという選択肢は「お金のムダ」になりやすいです。なぜなら美術系専門学校を卒業したという事実が就職に際して、なんの肩書きにもならないからです。いや、もしかするとかえって邪魔になることもあり得ます。(そういう現場の声を多く耳にしています)
これは実際に、デザイン関係の就職試験や面接にいった場面を想像していただければ理解できると思います。企画部や広報部、企業のデザイン部門採用担当者は、履歴書に書かれている専門学校卒業のことより、その人自身がつくった作品を重要視します。専門学校を卒業したということはスタートラインに立つチャンスを得ただけであって、そのチャンスでみせる作品のレベルが低ければそのままお帰りいただくしかありません。当たり前のことですが、子育てが一段落し、自分でビジネスをはじめようとするママさん、パパさんにとっても美術系専門学校でデザインを学ぶことはあきらかな遠回りになります。
本来なら先輩デザイナとして、またはこのサイトの広告主からの意向をくめば、美術系専門学校へいくメリットを書きつらねる方が利益につながるのかもしれませんが、それではこの記事を真剣に読んでくださっている方々のためになりません。もしくは生徒たちの将来を考え、自分で専門学校のことをお調べになられている熱心な高校の先生方にウソの情報をつたえることになってしまいます。
再度、声を大にしていいます。専門学校へ行くことはお金のムダになりやすいです。
ただし、まだまだ社会にでることを先延ばしにしたい人にとってのモラトリアム(人生の猶予期間)だと、しっかりと認識している分には構わないと思います。東大をはじめとした多くの国立大学がギャップイヤー(社会体験をするために大学を休学する制度のこと)を採用していることからもおわかりいただけることでしょう。
親御さんのなかには専門学校側から出ている資料をみて「就職率98%」だとかいう宣伝文句を鵜呑みに信じる人もいるかもしれませんが、アルバイトや派遣、デザインとはまったく関係のない仕事に就いてもカウントされるし、仕事がなかった卒業生を短期間の教員として採用するという荒技まで使ってこの数値を無理やりたたき出しているのです。専門学校は「学校」という看板を背負っていますが、その本質はビジネスです。また生徒はお客さまです。それゆえ、できる人よりできない人にあわせてしまうところがあります。
入学の敷居と学費の高いことで有名なモード学園は、企業とのコラボ実習(インターシップのように実際に企業の現場にでて、打合せから制作・修正作業までこなす)にとても力を入れて、できない人は置いてけぼり、卒業させてもらえないそうです。それくらいの厳しさをもった専門学校でなければ、お金を払ってまでいく意味がないように思えます。
デッサンそのものは上手なのに、デザインの世界で食べていけない人って意外に多いです。つまりデッサン能力は、デザインを構成する基礎能力のひとつであって、デザイナになるための絶対条件ではありません。デッサンにはデッサンをうまくみせるコツ、はやく上達するコツがありますが、それはデザインのコツとは違います。
よく女性のかたで正式なデッサン教育を受けていないことにコンプレックスを持つ方がいらっしゃいますが、それは言い訳であって、理由にはなりません。かえって正式なデッサン教育をうけていない人の方がユニークなデザインを作れることだってあるんです。山頂に至る道は1つではありません。デッサンに固執するのはやめましょう。関係ありません。